ビギナァ OF スマイル

(壱)
 あれは、私が科学者として少し有名になりだした頃だった。
 一通の手紙が届いた。
 
 【冒険者である あなたに頼み事がる。ぜひ、パレオ王国へ来てはもらえないだろうか】
 いったい、どんな用件なのか解らぬまま私はパレオへと向かった。
 好奇心の強い私にとってこうゆう誘いはうれしかったのだ。
 ただ、今 思うと子供だったからともいえるだろう。
「シニア・R・エリー様でございますね。お待ちもうしておりました。こちらの馬車にお乗りくだ
 さい。」
 パレオに着いた私を迎えたのは、きっちりとした洋服をまといシルクハットをかぶった
 男性だった。
 何も不信に思わず乗り込むと、馬車は走りだした。
「着きましたよ。」
 馬車のドアが開かれ、目の前に広がる景色に私は驚いてしまった。
 白い大きな城。物語に出てきそうなその光景に私は見とれてしまったのだ。
「シニア様。国王がお待ちになっております。どうぞ、こちらへ。」
 …国王が待っている。たぶん、その人だろう。私に頼みがあるのは。
 人から頼まれるのは、今に始まったことではない。
 おもしろければ、タダでやることもある。
 その依頼内容によるのだ。
「この部屋でございます。」
 大きなドアを開くと、そこには国王らしき人、そのほかに大勢の人間がいた。
 さぁ、私にどんな依頼をするのか。
 私を楽しませてくれるといいんだけど。

(弐)
 興味があったとはいえ、何を頼まれるか分からないものに手を出すんじゃなかった。
 今 後悔している。
 てっきり何かを作れという依頼だと99%思っていたからだ。
 でも、ここの国王は変わり者だということを知っていれば予想できただろうに。
 来てしまったからにはしょうがない。
 もう逃げることはできないんだから。
「ほほぅ お主がシニア・R・エリー殿だな。噂に聞いていた話よりずいぶん幼く見えるが。
 …まぁ そんなことはいいだろう。単刀直入だが、引き受けて欲しい事がある。」
 そう言って、奥の方から誰かを連れて来た。
「今年で15歳になる息子・アロウだ。こいつをもっと鍛えようと思ってな。ぜひ、冒険者に
 しようと考えたのだが。それには仲間が必要だろう。そこでシニア殿にアロウと一緒に
 1年間旅に出て欲しい。もちろんお金ははずむ。シニアどのは科学者でもあり冒険者で
 もあると聞いた。‥ぜひ、引き受けてはくださらんか?」
 こんな依頼がくるとは思わなかった。
 自分の息子をわざわざ冒険者にしたいという親がどこにいる?
 それも一国を背負うことになる王子を…。
「国王様少しお言葉ですが…その私も今年で16歳になったばかり。そんなことでは王子
 を守ることなどできないと思いますが。」
 出来れば断りたい。
 頭の中でそう叫んでいる。
「…だが、聞いた話では一流の魔法使いよりも上のレベルだと…仲間にするならシニア殿
 以上の強い仲間はいないだろう…そう聞いたのだ。」
 誉められると断りにくい。
 …そうだ、王子に聞いてみよう。
 普通だったら冒険者にはなりたくないはず。
 今まで裕福で育っている者ならなおさらだ。
「…王子様にお聞きしますけど。あなた自信、冒険者になりたいのですか? 聞く話より
 ずっときつい試練が待っているのですよ。…特に私といると。」
 少し脅しがかっているけど、これは本当のこと。
 いつモンスターに襲われるか分からない世界なのだから。
「はい 充分承知してます。僕はこうゆう身分でなければ是非冒険者になりたいと思って
 いましたから。剣の練習などはいつもやっていました。」
 目をきらきらさせている。
 これは本物だな。
 この目を見てまで断るのは苦しい。
 …たしか1年だけだったはず。
 しゃーない…受けるとするかな。
「分かりました。そのお話お受けいたしましょう。ただし、条件が。」
「ふむ、何かな?」
「1年間の間になんと言われましても一回しか戻って来ません。それと私たち2人だけでは
 さすがに苦しいでしょう。あともう1人仲間が欲しいのですが。」
「うむ 承知した。仲間のもう1人は用意しよう。では、それだけかな?」
「…そうですね、出発は明日の丁度正午にしましょうか。では、今から支度をしなければ。」
 私はなんだか急いでいた。
 少し楽しみなのだろう。
 城から出ていこうとする私を王子が止めた。
「待ってください シニアさん。あの 僕は冒険者カードを持っていないのですが…。」
 それもそうだった。
 王子が冒険者カードを持っているはずがない。
 これはまず練習が必要かな。
「…そうですね、まずはカードを取ってからにしましょう。…心配しなくてもカードを取る
 間は1年に入れませんから。それに少し練習しなきゃ。出来次第でカードを取りに出発
 することにいたしましょう。」
 言葉と考えは正反対。
 冷たい口調のわりには、心はうずうずしてる。
 初めての仕事はドキドキするもの。
 その時のドキドキが再び私に戻ってきた。
 明日からの練習が楽しみになっているのだ。
 もう誰も止められない。
 動き出してしまったのだから。

(参)
 思春期…私にもあったはずの年齢。
 10歳のときに親の元を離れ大都会に出た。
 研究を続けるにはそれしか方法がなかったから。
 周りは大人だらけで私も子供の気分ではいられなかったのを覚えている。
 教えてもらう事ばかり。
 人に教えるなど私には早いといつも心の中で押さえてきた。
 押さえ続けてきた心を彼が解かせてくれた。
 まだ少ししかいないけれど彼といると子供の様な気分にさせてくれる。
「そう そこで相手を投げる。」
 基本的な事を私は王子に教えていた。
 武術を習っていたらしいけどいちおう念のために。
「もう一度お願いします。」
 息を切らせてまだやれるという勢いで王子は立った。
「もうそこで終わり。これ以上やったらぶっ倒れるわよ。」
 始めて5時間はたっている。
「そうですか? 分かりました。」
 そう言うとばったりと倒れた。
「ち ちょっと大丈夫!」
「あっ 平気です。ひさしぶりだったから、こんなに長い時間稽古するの。」
 まだ平気だって顔をしていた。
 普通の男だったら1時間でやめてしまいそうな事をやっているのに。
「…たいしたものね。そこまでの根性があれば冒険者になれるわよ。」
「ええっ 本当ですか!」
 バッと起き上がり私を見る。
「…でも職業は何にするつもり?」
 そうこれが一番肝心。
「そうですねぇ…ファイターは?」
「王子ってなんかモンスターとか切れなそうだから駄目かも。」
「うーん それじゃ 魔法使いは?」
「あれは魔力がなきゃ駄目よ。私が調べたところによると少ししか王子には無いわね。」
「えっと それじゃあ 盗賊とか?」
「王子の立場上やめといたた方がいいと思う。」
「……僕はいったい何が向いてるんだろう。」
 まずい!
 本気で悩み始めた。
「ねっ ねぇ 詩人って興味ない?」
「…詩人ですか。」
「そう! 職業の1つよ。歌とか楽器とかでモンスターを酔わせるとかで戦力になるはず。
 まぁ 詩人兼〇〇って感じで他にも何か付いてくるのがほとんどだけど。」
「…それならできるかもしれませんね。僕にも。」
「大丈夫よ。詩人になるのもファイターなんかと一緒で難しいんだから。逆にみんな納得
 するわよ。国王も詩人なら安心なさるでしょ。」
「そうだね。決めた! 詩人にしよう。」
 これで王子の職業が決まった。

(四)
 冒険者カードを取るため、必要だろうと思うことをやり終えた。
 
 その翌日。
 私が必要だろうと言って置いた、もう一人・私達の仲間が紹介された。
「フィリスアム・テラーデュといいます。王室側近の一人として仕えていました。」
 真面目そうな青年‥そんな印象を受けた。
 若い年で王室の側近になった腕なら信用できそう。
 もっとも、目がそう語っているかのようで私は彼を気に入った。
「よろしく、フィリスアム! …フィリスでいいかしら?」
「好きな様に呼んでください。シニア嬢。」
「嬢なんてつけなくていいわ。これからは仲間として一緒に冒険するのよ! 堅っ苦しい
のはやめましょ。それに私はあなたより年下なんだから。」
 彼はちょうど20歳だと聞いた。
 ならば私より年上で、大人。
「わかりました…じゃなかった。…わかった! 王子とこれからご一緒に冒険できるなんて
光栄です。できるかぎり王子をお守りいたします。」
 あ〜ぁ、どうしてそう堅い挨拶になっちゃうかなぁ。
 いちおう用意する物は準備万端。
 後は出発を残すのみ。
「じゃ、アロウ・フィリス行きましょうか。」
 2人に言うと、見送りのみんなが名残惜しそうに見つめる。
「心配いらないよ。シニアとフィリスがついているんだから。では、行ってきます。」
 王妃に心配いらないことを言い、私達3人は冒険者カードの取得のために冒険者
グループへと向かった。

 冒険者グループのある街までは馬車で行くことになった。
 王子を歩かせるわけにはいかないと、国務大臣がしつこく言うので、しぶしぶ私は乗って
いるんだけど…本当だったらそこまで歩いていくほうが王子にとってはいいと思うの。
 途中で降りるわけにはいかないしなぁ。
 こりゃ、先は大変そう。
 ガヤガヤガヤ…
 活気ある街。冒険者グループのある街へと着いた。
「この奥に冒険者グループがあるわ。……ここで馬車を降りましょ。」
 そう言って、私が馬車から降りると、付き添いできていた兵隊があわてるように止める。
「ちょ、ちょっと何するのよ!」
 わたしを後ろから押さえつけているその兵隊は何か下僕にでも言うかのように
「王子がそんなところまで歩いていっていいと思っているのか! 国王から頼まれた者と
いっても所詮、一般市民。考えをわきまえてから言うのだな。」
 ムカッ!!
 何、この男!!!
 この時の私は考える時間がなかった。
 気づいたときには、その男を氷付けにしてしまっていた。
「シニア!?」
 馬車の中から見ていたアロウがあわてて駆け寄ってきた。
 わたしは『どーだ! 参ったか!!』という感じで氷づけにされた男を見る。
「大丈夫よ、死んではいなから。このまま城に持ち帰って、お湯でもかけてやってくれれば
溶けるわ。…私としては国王から頼まれた私の身分をちゃんと教えてからお湯をかけるの
を望むけどね。」
 そう言って氷づけにした男を馬車に積み、街の奥へと進んで行った。

(五)
 アロウとフィリスの2人に冒険者カードを取って貰わなければ冒険に出れない。
 けっこうカードを取るには日数がいるのよね。
「最初は何をするんだい?」
 アロウは集まってきている冒険者志願の人達を見ながら訪ねた。
「まずは職種は関係なしに問題が出されるの。冒険者には必要な知識のテストよ」
「ぼくは勉強なんてしていませんけど…」
 兵士のフィリスが勉強しているはずがなかった。
 数時間前に仲間になったばかりなのだから。
 ちょっと不安になってきた。
「…大丈夫よ。○と×の2択問題だから」
「自信を持っておかないと落ちてしまうよ」
「あっ、はい! がんばります」
 礼儀正しく返事をするフィリスは顔がやる気になっている。
「申し込みの手続きを取りに行きましょ」
 2人を引き連れてさらに奥へと入っていった。
「お二人ですね」
 受付員の人が申し込みの紙を渡してくれる。
「これに書けばいいんだよね、シニア?」
 まだあどけない笑顔で聞いてくる。
「えぇ。…でも、アロウは自分の本籍・国籍をちゃんと知ってる?」
「えっ!? …え〜っと……知らないかな」
 あちゃー!!
 王子ともなるといろんな勉強はするけど大切なものが抜けてたりするのよね。
「代わりに私が書くわ。フィリスは大丈夫?」
「はい、大丈夫です。城に勤めるときも書きましたし」
「うん、偉い!」
 これでフィリスも知らないと言われたらこの先、やっていけないところだったわ。
 アロウの申し込み用紙も書き終わり、また受付員に手渡す。
「あれっ? シニアさんじゃありませんか!?」
 受付員の後ろから1人の女の子がそう言った。
「はぁ…そうですけど……」
「ラフランです! 覚えてませんか? シニアさんが冒険者カードを取りに来たとき
お世話になったラフランです」
 私が冒険者カードを取りに来たとき?
 こんな女の子いたかな。
 あのときは、小さい女の子と…!!
「まだ小さかった、あの女の子!?」
「そうです! 良かった。覚えてらっしゃって」
 偶然にも久しぶりに会ったラフラン。
 世間はせまいのか広いのか。
 まぁ、退屈だけはしないですむかもね。

 1998年7月01日(水)15時19分14秒〜1999年2月03日(水)10時43分39秒投稿の、みすなさんの小説です。「今宵も……」の番外編です。まだ継続中です。

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