−躯−(第2部)(2)

「11話・感涙」

 葉平の彼女がいた場所とは?
 パソコンに映し出された映像をコピーして、さっそくその場所へと向かった、葉平・トラップ
と葉平のライバル君。
「それにして…こんな近くにいたやなんて…」
「案外そんなものなんだよ」
「おまえが言っても説得力がねぇな」
 3人が向かった先は…海棠家が所有する大学である。
 昌紀やトラップたちが通っているところだ。
「オレは高校のほうの校舎やから気づかんのも頷ける。けど、何でトラップは気づきせぇ
へんのや?」
「オレがおまえの彼女の顔知ってるわけねーだろ」
「…あっ、そうやった」
「でも、偶然というか…日頃、通ってる学校の隣の大学に彼女さんも通ってたなんて…
それでグジグジと悩んでたなんて…こんな葉平のライバルでいいのかなぁ」
「おまえが勝手に決めたんやろ!」
 すかさず後頭部を叩く。
「それよりも捜すぞ」
 大学の敷地内へと入っていく。
 今はお昼でサークル活動をしている者や昼食を食べている人などで外も賑わっている。
「そういや、何でトラップは授業、受けてないんや?」
 今日は火曜日、もちろん授業がある。
「おまえの方こそ、学校休んでるじゃねーか。オレは今日はいいんだよ。昌紀もさぼって
たみてぇだが。クレイとパステルは真面目に受けてるだろうな」
「…ふぅん…」
 校舎内に入っていくと彼女がいる科へと向かう。
「おっ、ここだ」
 教室を覗く。
「いるか?」
 葉平に訊くが返事がない。
「ちっ、入れ違いか」
「…いた。オレの彼女…」
「えっ!? マジ? どれどれ!!」
 はしゃぐライバル君。
「ほら、あそこ」
 葉平の指さす先にたしかにいた。
 あっちもなんか騒がしいのに気づいたらしく、こっちを見た。
「……葉平君!!」
 座っていたイスを倒して、葉平の元へ走ってくる。
 葉平も彼女の元へ駆け寄った。
「どうして? どうしてここにいるの??」
 彼女の問いよりも早く、葉平は彼女を抱きしめていた。
「……逢いたかった。…ずっとずっと逢いたかったんや」
 葉平の目に溢れ出す涙。
「…わたしも…逢いたかった」
 彼女と同じくらいの体の葉平を強く強く抱きしめる。
 
 流れ星が通る度、願った。
 『彼女に早く逢えますように』と。
 やっと逢えた。
 葉平の心の中はからっぽだったのが、ぎゅうぎゅうに何かで詰められたようだった。

「12話・不運?」

 やっと彼女に逢えた葉平。
 その後、夕日が落ちるまで2人は話していた。
「家が代わってもうたから」
「うん。連絡しようにもできなかったから…でも、こうして逢えたんだもん」
 逢えたことに喜ぶ。
 そんな2人の世界に入ってるのをトラップと葉平のライバル君は見ていた。
「そろそろ帰らねーか?」
「遅いですからねぇ。帰っちゃいますか」
「あーら、冷たいのね」
 2人の後ろから声がする。
 振り返ると長く伸ばした髪が目立つ女が立っている。
「…誰だ?」
 いかがわしい目で見る。
「誰だ…って……!!」
 トラップに顔を近づけてきた。
「な、なんだよ」
「…好みのタイプだわ。ねぇ、名前はなんていうの?」
「…トラップ」
「気に入った! 明日からあなたにラブアタックをかけちゃう」
 くるくる回って喜んでいる。
 思考回路が誰かに似ているような気もするが。
「ねぇー、あたし先に帰っちゃうからね」
 ラブラブモードに突入した葉平と彼女に向かって言っている。
 なんかやけに素早い。
 トントンと事を進めていく。
「あたし、あの子の友達なの。あっ、名前は芳本奈緒。そんじゃね、バイバイ」 
 トラップに投げキッスをすると帰っていってしまった。
 投げキッスされたトラップはというと。
「…なんだよ、あの女」
「厄介なのにひっかかりましたね」
 おまえもな…なんて考えたが言わないでおいた。
 言ったら、どうせしがみついてくるのが予想できたから。
「…お〜い、いつ帰れるんだよ」
 ラブラブしてる2人を見て、情けなくもなっているトラップ。
 この後、まだ2人のラブラブは続いていた。
 当然、それがおわるまでトラップとライバル君は待っていたらしい。

「13話・対面」

 平和な平和な日曜日。
 外でデートするには絶頂日だ。
「なぁんで、オレまで行かなきゃならねーんだよ」
「トラップにもちゃんと紹介しとかな、あかんと思てな。アイツも呼んでるねん。こないしてる
間に約束の時間に遅れてまう!」
「いいんじゃねーか…遅れたって」
「アホッ! どこに彼女と待ち合わせして遅れる奴がおるねん。行きたくなくてもオレが
連れていったるからな」
 トラップをずるずると引きずりながら葉平は靴を履き始めた。
 渋っているトラップにも靴を履かせ、玄関を出ようとしたときに後ろから声がした。
「あら、どこか出かけるの?」
 休日でのんびりしていた久神子だ。
「…彼女さんとデートだとよ」
 トラップが代わりに答えた。
「トラップを引き連れて?」
「紹介しなあかん。あっ、心配せんでも近いうちに姉貴にも紹介するから。すまんけど時間
があらへんねん。ごめんな!」
 そう言って玄関のドアを開け、もうスピードで出ていった。
 
 1人、立ったままの久神子はおもむかない顔をしている。
「…まだ…なのかしら」
「姉さんは心配しすぎる」
 いつの間にいたのか久神子の後ろには昌紀が立っていた。
「もうそろそろ始まる頃よ。それなりの準備はしておかなくちゃ」
「いつ起こるか分からない。姉さんもそうだったんだろ? 周りが異常に騒ぎ立てる必要
はないさ。もしかしたら葉平自信は覚悟してるかもしれない」
「……そうだといいんだけど…」
 久神子の不安の糸はなかなか切れそうにはないようだ。

 待ち合わせをしたのはネットカフェの前に午後2時。
 少し乱れた髪を整え、葉平の彼女は待っていた。
「…まだかな、葉平君」
 腕につけた時計を見ると、長針は10分を指している。
 行き交う人々の群。
 眺めていても飽きないほどの多種多様な人だらけ。
 でも、そんな人々より彼女は葉平を見つめているほうが飽きないでいた。
「電車でも遅れたのかな…」
 自分の来たときちょうどに葉平もやって来ることが多い。
 今日に限って自分よりも遅く、時間をオーバーしている。
 彼女の目の前から走ってくる男の子の姿が見えた。
「葉平君!」
 呼んだと同時に顔が見えた。
「…あれっ?」
 葉平ではない。
 でも、顔だけは知っている。
 走ってきた男の子は彼女を見るなり、ガッツポーズをした。
「よしっ! 葉平より先に着いたぜ!!」
 彼女はこの男の子が葉平の名前を口にしていることに気づいた。
「あの…葉平君のお知り合いですか?」
「あらら…僕のこと知りません? 葉平から何も訊いてないのかぁ。僕はですね、
クラスの人々アーンド先生も認めてる(?)葉平のライバル君なのです」
 自己紹介とはいえない自己紹介。
「どぞ、よろしく」
 葉平を愛する彼女と葉平のライバル君の対面はこのときであった。

「14話・好意」

 何が彼を掻き立てたのだろうか。
 葉平の彼女のとなりにいた人物を見て驚いたのは、この2人だった。
 ひとまず喫茶店に入ることにした。
「なぁんで、おまえがここにおるんや! 呼んだ覚えはあらへんで」
 まくし立てる葉平に反発するかのようにライバル君は立ち上がった。
「トラップさんには紹介するのに、何で僕には紹介してくんないかなぁ」
「…めずらしく妥当な意見じゃねーか」
 諦めの入っているトラップはコーヒーをすすりながら言った。
「ねぇ、2人とも喧嘩しないで仲良くしましょうよ。せっかく会えたんだから」
 葉平の腕を取って、彼女は葉平を落ち着かせた。
 彼女には弱い葉平。
 正直にいえば女性全般に弱いけど。
 おとなしく前にあるジュースを飲む。
「さすが我がライバルの彼女! 優しい!!」
 誉められた彼女は少し愛想笑いをして返答した。
 黙ったままジュースを飲み続けている葉平。
 彼女は目線を葉平に向けた。
「ねっ、葉平君。こちらの2人に紹介してくれる?」
 可愛らしい瞳でお願いされる。
 これを断るほど馬鹿じゃない。
 少し照れながらトラップとライバル君に紹介した。
「えーっと、まぁ2人も知ってると思うけどオレの彼女や! 呼ぶならハンドルネームの
クールミントちゃんでいいんやろ?」
「うん!」
「それでオレより年上で大学生」
「どうぞ、よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げる。
「そんでこっちの赤い髪してるのがトラップや。長い経緯は前に話したとおりや」
「よろしくな」
 手を少し挙げて合図するトラップ。
「そんでこっちの奴はオレを自称ライバルって言ってるんやけど…」
「あーーっ、僕は自分で自己紹介するからいいよん」
 喋る葉平の口を止めてライバル君は彼女を見つめながら
「機嫌が悪いときには手当たり次第に付く『野郎』を投げ飛ばして絞め落とす、ちょっぴり
(かなり?)危ない関節(技)マニアのナイスガイ」
 手をあごにつけてかっこ良く決める。
「…なんつー自己紹介だよ」
 呆れながらトラップはライバル君と見た。
 彼女とはいうと口に手を当て笑っている。
「あははっ…でも…」
 涙をながすまでに可笑しかったのか目にハンカチを当てながら
「こうして見てると葉平君に好意を持ってるのがすっごく伝わってくるんです。なんだか
負けそうなくらいに…」
 となりに座っている葉平に顔を向けてにっこり微笑んだ。
「男に好かれてもしょうがあらへんけどな」
「でもすごいッスね。僕がいつも葉平にむけてる好き好きオーラを感じ取るとは」
「気持ち悪りィもん出すなよ」
 結局3人が集まるとボケ・大ボケ・ツッコミのトリオになってしまっているのは気のせい
だろうか。
 和気藹々と会話は進んでいった。
 話し出してから約2時間がたった。
 ほのぼのと過ぎていってる。
 と、思った矢先のことだった。
「キャャーーーーーーーッッッ!!!!!」
 店内に女性の叫び声が響きわたる。
「なんや!?」
 立ち上がり叫び声のした方を見てみた。
「…キャッ!」
 葉平の彼女はその姿に目をそらした。
 黒く焦げた人が転がっている。
 見るにも無惨な姿だ。
 女性だったのだろう。
 ピンクの布の切れ端が少し残っている。
 何事だと騒ぎ立てる店員と客をよそに葉平の額に大粒の汗が吹き出てくる。
「まさか、これじゃねーだろうな?」
 トラップのその言葉に葉平はピクリと体を動かした。
「……まさか…な」
 重く口を開いた葉平は彼女の肩を抱くと店から出ていった。
 その後をついていくようにトラップとライバル君も店を後にした。
 災難がはじまる。
 葉平の心によって。

「15話・紊乱」

 黒こげの焼死体。
 焼けているのにも関わらずニオイは一切しない。
 騒ぎ出す店内には警察およびマスコミ関係の人達が次々とやってきていた。
 テレビでは緊急特番と称するニュースが流れ、騒ぎ立てる。
 ニュースではもちろん、その現場にいた人達にインタビューをする。
 でも、みんなの言葉は一緒だった。
『叫び声がしたと思ったら、そこには黒くこげた姿があった』と。

 海棠家にもこのニュースは流れていた。
 だが一般家庭が騒ぎ立てるような雰囲気ではなく、真剣なまなざしを向けていた。
「葉平たちのいた場所で…偶然には思えないわね」
 葉平の姉・久神子はテレビ画面を見ながら重いため息をついた。
 今日、葉平を見送るときにそろそろだと思っていた矢先のことだ。
 それに久神子のときと違い、被害者を出していることに頭を悩ませている。
 ここで少し補足をしておこう。
 海棠家には昔から世の中の安定を守る宿命がある。
 あるといっても本人たちは何もせず、彼ら彼女たちから生まれた影がその仕事をして
いるので本人たちも気づかずに育っていた。
 けれど影にも最後がある。
 表の本人たちが殻から出たときに、影は消え失せる。
 でも、ただ単に消え失せるわけではない。
 安定を守ってきたため、邪悪な気を吸い込んでいる。
 それを爆発させるかのように、世の中に災難が降りかかる。
 久神子のときは鬼の形をした物体。
 徘徊する大きい物体に久神子とクレイの力でなんとか葬ることができた。
 今回、葉平のはひと味違っている。
 いきなり死者を出してしまっているのだから。
「ニュースで言ってることと同じだぜ。オレ達も気づいたら目の前に黒いもんがあった
からな」
 トラップは口を開こうとしない葉平のかわりに現状を久神子に話していた。
「やっぱ間違いねーのか?」
「…たぶんね。それとこれは私の予想なんだけど、もしかしたら葉平の近くにいたかも
しれないわよ。現況に葉平の影が」
 どんな姿をしているか判らない自分の影に予測はできない。
 トラップは座ったまま動かない葉平を横目で見ると、唇を少し噛んだ。
 それは久神子にもいえることで、こうしていても仕方ないと席を立った。
「葉平は部屋に戻りなさい。ゆっくり休んで頭を楽にするといいわ」
 うんともすんとも言わず葉平は静かに部屋から出ていった。
 ドアが閉まるのを確認してから、部屋に残ったトラップと久神子は地下室へと足を
運ばせることにした。
 普段ならば久神子と昌紀しか来ないカウンターバーに今日は3つの影があった。
 わいわいと盛り上がるものではなく、静かな空間に声が響く。
「えぇ…そういう訳でお願いします。できれば早急に」
 携帯の電源を切ると、久神子は前に置かれたカクテルを口に含んだ。
 アルコールが体中にまわっていく。
「桐生さんには迷惑をかけてしまうな」
 カウンターの中に入っている昌紀はビールをワイングラスに注ぐと、トラップに手渡した。
 セリフの中にあった桐生とは海棠家に仕えている者だ。
 久神子のときもお世話になった、今年62歳になる頼りになる人物。
 分析にかけては一流といってよいだろう。
 その桐生に今回の焼死体について調べてほしいと電話をかけたのだ。
「甘えてしまうのよね…つい仕事柄で人を動かすことにしてしまって」
「いんじゃねーか? あのおっさん、正月のときに頼りにされんのが嬉しいって言ってた
からな」
 トラップはビールをぐいっと飲むとピーナッツを口の中に放り込んだ。
「そうかしら?」
「そうだろ」
 年上の久神子ではあるが、こんなときはトラップに感心させられる。
 少ししか話をしていないはずなのに、相手がどんな人か見抜いてしまう鋭さ。
 昌紀とはまた違う頼りがいがある。
 そう考えたあとには、いつものトラップがピーナッツをパチンコ玉にして遊んでいる。
 それを見かねて昌紀は口に出した。
「悠長だな」
 それを耳にするとトラップの表情は一転にして変わった。
「んなわけじゃねぇ。はっきり決まってねんだし、アイツはボー然状態だぜ。周りが騒い
だってなんにもなんねーだろ。口を出すのは明日だっていいんだよ」
 するとビール瓶を手に取るとそのまま飲み干してしまった。
 久神子もそれをマネするかのようにウイスキーの入った瓶を取り出した。
「やけ酒じゃないけど、私も今日は飲まなきゃ寝られそうにないわ。でも、トラップ、飲み
すぎないようにしてよ。二日酔いなんてシャレにもならないから」
「……わーってるよ」
 珍しいくらいに3人はお酒を飲んだ。
 お酒に頼って眠ろうとするのにそこまで時間はかからなかった。
 地下室で3人が飲んでる頃、葉平は眠れずに布団の中に埋まっていた。
 眠れない夜が続く。

「16話・覚醒」

 普段、明るい性格の葉平は落ち込むと180度変わってしまうのか?
 …そんなことはない。
 ただ、今の彼には迫りくる威圧感が体中に伝わってきていた。
 夕方の焼死体の事件の後。
 葉平は一言も口を交わしていなかった。
 怖かったとか落ち込んだとかではない。
 喋りたくても喋れなかったのだ。
 行動で表すにも、鉛を背負ったように身体は重い。
 そんな状態では周りからは落ち込んだようにしか見えなかったはずだろう。
 葉平自信は喋りたくてしょうがなかった。
 でも、口は開いてはくれない。
 そんな状態のままベットに潜り込んでいた。
(どないなってしもたんやろ…オレ)
 不自由な体に悪戦苦闘するにも、神経が通っているのかと疑問を持つくらいだ。
 がさごそと体を動かしている矢先のこと。
 プルル プルルルッ
 机の上に置かれた携帯電話が鳴り響く。
 腕に力を込め、はいつくばるように机にしがみつき、なんとか携帯電話を手に取った。
 なにかをやり遂げたようにベットの上に倒れ込むと、電話のボタンを押した。
『もしもし、葉平君?』
 声の主は葉平の彼女だ。
 その応答に返事をしようとしたときには遅かった。
(しもたっ! オレ、今話せないんやった!!)
 考えないで電話にでるナイスアホーである。
 目の前にいる相手に話せないのはどうにかして伝わるものだが、相手が見えてない
という盲点がある。
『…どうかしたの?』
 彼女の不安そうな声が聞こえてくる。
 葉平は後悔していた。
(こんなことならポケベルにしとくんやった)
 文字で会話するポケベルなら声が出なくても大丈夫。
 でも葉平は女子高生達が持っているような代物を所持していない。
 危ない兵器は持っているが。
 どうにかしないと…そう考えるがどうしていいか思いつかない。
 彼女は何を悟ったのか、一人で話し出した。
『今日の夕方のこと…何か葉平君と関係があるの? トラップさんが何か言ってたし、
葉平君も元気なくなってたし。……別に話したくなければ話さなくていいよ。ただ、心配
だったから電話しただけなの。じゃ…切るね』
 彼女が耳から電話を話そうとした瞬間、何か聞こえた。
 なんだろうともう一度、耳にあてると葉平の声が聞こえていた。
「…あんがとな」
 葉平の口から自然と出た言葉。
 話せないなんてことを忘れて彼女にどうしても言いたかった。
 誰かに許されたかのように、葉平は自由になっていた。
『ううん、いいの。…葉平君の声が聞けて嬉しかった。じゃ、おやすみなさい』
「……おやすみ」
 電話をゆっくり耳から遠ざけると、葉平からは笑みがこぼれていた。
 彼女からの思わぬ電話。
 頑丈な声を出すという糸を切ってくれたような、そんな気分。
 なによりも彼女の心遣いが嬉しかった。
(…自慢の彼女やな…)
 みんなに自慢してやりたい。
 自分の彼女はこんなに心のある人なんだと。
 そう彼女のことを思いながら、ベットの中にまた潜り込もうとしたときだった。
 葉平の躯の中から何か聞こえてくる。
「何や??」
 突然のことに葉平は驚いた。
『…わ……れ…は…しゅご……しん』
 途切れ途切れで聞こえてくる。
 だがそれは次第に脳へと近づいてくる。
 到達すると思った瞬間―――葉平の躯は黄金の光りに包まれた。
 そして自分の前にぼんやりと人の形らしきものが浮かび上がった。
『やっと目覚めた…今からおまえの覚醒が始める…』
 そんな言葉が聞こえたと考えるが先に葉平の意識は催眠術でもかけられたように
遠のいていった。
『おまえとのシンクロをしなければ』
 うっすらと人の形らしきものは、葉平の躯と重なっていくのだった。

 この日の空は、星一つ見えない真っ暗な時。


 1999年2月13日(土)15時58分01秒〜4月26日(月)20時13分12秒投稿の、みすなさんの小説「−躯−」第2部11〜16話です。まだまだ継続中。「葉平の彼女」のモデルは、……読んでの通りです(笑)

[みすな作の小説の棚に戻る]

[冒険時代に戻る]

[ホームに戻る]