今宵もすてきな城へ(31〜40)

(31)
「次の方は、この方です。」
 ライトが照らしたのは、小柄な女の子。
 分厚いメガネが特徴的。
「あたし、リシャ・マイテイといいます。あの、職業は親と一緒に農業をやっ
 てまして…いやぁ、お恥ずかしいかぎりです。」
 ちょっと下を向いて恥ずかしながら、話す彼女。
 かわいいなぁ…でも、なんだかメガネのせいでよく表情までは分からないの
 よね。
「農業ですか、僕も興味があるんですよ。自分たちの手で物を作れる仕事です
 からね。今度、教えていただけませんか。」
 王子は目をうきうきさせてるみたいで、彼女に聞いてくる。
 すると、彼女もなんだか機嫌がいいみたいで王子に話かける。
「王子様も農業に興味あるんですか!? ‥でも、汚れる仕事なんですよ。王子様がやる
 のは…。」
「それでもいいんですよ。汚れてもそれだけの価値があるのですから。」
「…そうですか、そこまで言いますのなら。今度、お教えいたします。」
 彼女もうれしそうで、もじもじしながら顔をピンクに染めている。
 王子のことを、本当に好きなのかもしれない…。
 そんなことを考えさせられた。

(32)
「お次の方は、この方です。」
 ライトが照らしたのは、うすいパールブルーの長いドレスを来た女性。
「ミリア・ステール・マリアと申します。神のお導きにより今日はやって参りました。」
 ご丁寧に1人1人に会釈をしてまわってる。
 側近の1人が彼女に聞く。
「…神のお導きですか…。あなたのご職業は?」
「シスターですわ。…本当でしたらシスターは神に使える身。ですが、神からお告げが
 あったのです。『汝、一生を共にする者、現る』 と。このお告げを聞いた次の日でし
 た。王子の花嫁を募集していると。この方かもしれないと思い、ここに来たのです。」
 神の声…。
 本当にシスターって神の声が聞こえるんだぁ。
「一生を共にする者…あなたの夫になる人のことをさしているのでしょうね。シスター
 が結婚をしてはいけないとは、僕は思いませんよ。愛している人と結婚をするのは
 良いことなんですから。神も許してくれますよ、きっと。」
 愛してる人かぁ。
 でも、照れないのかなぁ 人前で言うの。
 わたしだったら‥大勢の前では言えないかぁ‥はははは。
「ええ、私もそう思っております。きっと、神のご加護があると。」
 そうして、彼女は祈るようにその場所に座る。
 でも、この光景を誰1人として変に見る人はいないと思う。
 だって、それはとてもきれいだったから。
 みとれるくらいに、新鮮な感じを味わった。

(33)
「お次の方は、この方です。」
 ライトが照らしたのは、黒いドレスを着た女の子。
 肩くらいまである髪に黒いリボンを付けている。
「レオネウィークエルカ・パイザ・ウォーレン。…レオネでけっこうです。」
 名前だけ言うと、黙ってしまった。
「…あなたは、なぜここへ来たのですか?」
 王子が彼女に聞く。
 すると彼女の後ろにいたおじいさんが答えてる。
 長いて白いひげを生やした人。
「はい、お嬢様は王子にたいへん興味を…」
「たいへん申し訳ないのですがわたしは、彼女に聞いているのですよ。ぜひ、彼女の
 口から聞きたいのですが。」
「……別に理由はないわ。お父様に言われて来ただけですもの。」
 なんだか、暗い空気が漂ってしまう。
「…でも、こうやってここへいるということは、いやではないんですよね? いやならば
 途中で抜け出しているはずですから。」
 彼女は一言こう言った。
「…そうね、そうかもしれないわね。」
 愛想が無いといえばそうなってしまうかもしれないけど、わたしにはなんか引っかかって
 あんな態度をとっているように思ってしまう。
 だからこそ王子も彼女に聞くんだよね。
 時間があったら彼女と話してみよう。
 真実の彼女を知ることができるかもしれないから。

(34)
「最後の方は、この方です。」
 えーと、最後ってことは誰かあと1人残ってるはず。
 ライトはくまなく辺りを照らしてからわたしの横を照らした。
 そう、最後はシニア! 

「シニア・R・エリーといいます。冒険者でもあり研究者もやっております。」
 深々く頭を下げるシニアを見て、あるところから驚いたような声が。
「あら〜 シニアちゃんじゃないの!? 」
 それは、国王の後ろにいた王妃。
「おひさしぶりです、王妃様。また一段とお綺麗になられて。お会い出きたこと感謝
 いたします。」
 なんだか王妃と知り合いみたいで、丁寧な言葉を交わしていってる。
「おぉー 来てくれたのかシニア君。 待っていたのだよ、君が来てくれるのを。」
 国王は待ち望んでいたかのように、シニアを見ている。
 でも、そんなところに あわてている王子の姿があった。
「父上!! シニアを呼んだのは父上だったのですね!? なぜ、こんなところに
 シニアが来ていると思えば。 ごめん、シニア 父上のわがままに付き合わせて。」
「いいのよ、アロウ。たしかに興味はあったし。それにアロウの花嫁候補を見ておく
 権利があるんじゃないかしら、私には。それに、ここに私がいたらまずいことでも
 あるの?」
 顔をぶんぶんと王子は振っている。
「い いや そんな意味で言ったんじゃないんだ。ただ、君には‥決まった人がいる
 から‥。」
 決まった人??
 ギアのことかしら?
 でも まだギアはシニアが好きだってことを知らないはずだから、違うはずだし。
「‥そうね。その話はまた後でしましょ。国王と王妃様も、後でゆっくりとお話を。」
 そう自分で締めくくると、また深々く頭を下げた。

「これで、15人の花嫁候補たちの自己紹介を終わりたいと思います。後はご自由に
 おくつろぎくださいませ。」
 長い自己紹介も終わり、また周りは話す声でいっぱいになる。
 わたしはというと、気になることがいっぱいあって、頭の中がパニックになりそうだった。

(35)
 おいしい料理を食べながら、わたしはシニアに聞いてみた。
「ねぇ、シニア。王子となんか知り合いみたいだったけど。」
 ルーミィの口のまわりについたソースを拭いていたシニアは、「あぁ、それね」という
 感じで話してくれた。
「うーん‥知り合いっていうか、仲間みたいなものね。どうせならアロウを紹介しながら
 話したほうがいいわね。」
 遠くにいた王子をシニアが呼ぶと、こっちに王子が来た。
 うわ〜 近くで見るとよけいに似てるような気がする。
「じゃ、みんなに紹介するわ。元冒険者で私の仲間だったのよ、アロウは。」
 えっ!? 仲間! それも冒険者!!
「一ヶ月だけでしたけどね。」
「それも、冒険者グループでちゃんと冒険者カードも取ったのよ。だから、パステルたち
 よりもレベルは上なのよ。…たしか、7ぐらいだったよね?」
「あぁ、そうだよ。まさか僕もそんなに上がるとは思わなかったけど…。」
 ‥‥‥。
「レベル7−−−−−!!」
 わたしとキットンが声を合わせて言ってしまった。
 だってだって一ヶ月でレベル7だよ! わたしたちなんて2年もたつのに。
 王子は苦笑しながら言った。
「ほとんど、シニアが倒していたのを最後にとどめをさす程度だったんだけどね。なんせ、
 僕 詩人が職業だったから。」
 王子の詩人姿…。
 きっと、あの会場にいてもひときわ目立ってただろうなぁ。
「だって いきなり国王の気分で『冒険者になれ!!』 って言われたのよ。それを
 すんなり聞くもんだから…。だから国王は今だにわけ分かんなくなるのよね。」
 あれ? そういや 前にも言ってなかってっけ、あの国王のことだからって。
「そういや、第一関門のとき言ってなかったっけ『あの国王のことだから』って。」
「うん。だって王子を冒険者にするために、いちいち私に頼んだのよ。城にも兵士は
 沢山いるのに。それにいつも考えがぶっとんでで困ったものよ。今回だって、そうなん
 でしょ、アロウ。」
「えぇ、まぁ。」
「やっぱり…いっつも、変わった考えする人だから。」
 なんだかすごい人みたい…国王って。
 
 この後、わたしたちは話したいことが沢山あるということで部屋の一室に行くことに
 なった。
 シニアの1つの謎が明かされるとは…わたしたちパーティは誰も予想しなかった
 だろう。

(36)
 城の一室は、なぜこんなに広いんだろう。
 部屋に置いてある家具や掛けられてる絵をキョロキョロ見回して、大きな
 ソファーに座った。
 わたしたちが全員座ると、メイドさんが紅茶を持ってきてくれた。
「どうぞ お召し上がりください。」
 そう言ってテーブルの上に置いていたのは、あのときわたしとぶつかって
 しまった女の子。
 えっと たしか『キャットラル』っていう種族だったっけ。
「ありがとう。」
 王子が彼女にお礼を言うと、彼女はなんだか急ぐように部屋を出ていって
 しまった。

 温かい紅茶にとびきりおいしいお菓子を食べながらわたしたちは一息
 ついた。
 その中で一番最初に口を開いたのはマリーナ。
「…ねぇ、気になることがあるんだけど。シニアと王子の関係は分かったわ。
 でも、シニアの自己紹介のとき王子が言ってたわよね。『シニアには決ま
 った人がいるから』って。シニアにはいるの? そうゆう人。」
 するとシニアはゆっくりと紅茶を飲んだあと話しはじめた。
「…決まった人ではないの、ただ決められた人。そうね 簡単にいえば
 許嫁のようなものね。‥本当は昔からいたらしいけど。」
 昔から?
 今まで知らなかったってことかな。
「俺は初めて聞いたぞ!シニア。」
 そう、幼なじみのギアでさえ知らなかったみたい。
 それに答えたのはアロウ王子だった。
「無理もないのですよ。彼女は知らなかったのですから。僕…いや僕の父上
 に聞かされるまでは。」
 国王はシニアに何を言ったのだろう。
「どうゆう意味なんですか?」
 クレイが王子に聞くと、驚くべく事実を聞くことになった。
「……彼女は、僕とは『いとこ』になるんですよ。」

(37)
「いとこ!?」
 それって 王子と血がつながってることだよね。
 だって たしかシニアはギアの幼なじみでどこにも接点がないはず。
「…私の母がここの国王の妹だったのよ。」
「僕も父上から聞かされたときはびっくりしました。てっきり父上は一人っ子だと思っていた
 ので。」
 えーと ちょっと待って。
 王子のいとこってことはシニアは…。
「ここの国のお姫様ってことなの!?」
 シニアに向かって大声で聞く。
「…いちおうね。」
 そこにキットンが口をはさむ。
「なら なぜ一般人として暮らしていたのですか?」
 この問いには王子が答えてくれた。
「シニアのお母さんはかけおちをしたんだよ。今のシニアのお父さんとね。そのときの国王
 いえば僕たちにとってはお祖父様が反対したんだ。一般人との結婚は許さないと。
 そして王家や家族を捨てて、国から出ていってしまった。」
「でも、なぜ そのシニアに許嫁がいるんだ?」
 ギアが王子に向かって聞いてる。
「シニアが生まれたとき、国王に手紙が届いたのです。『私は彼とのあいだに子供が生ま
 れました。女の子です。』その内容がね。それを読んだ国王はシニアが大きくなったら
 王家に戻そうと思って、そのときに許嫁を決めたんだ。相手はシニアより一ヶ月早く生ま
 れたバーニング家の息子。きっと知っているはずがないと思った 今の国王がシニアを
 やっと見つけて教えたんだよ。もちろん、シニアの親も承知した。だけどシニアは…。」
「…だって、いきなり許嫁がいましたって言われても私どうしたらいいのか分かるはずが
 ないじゃない! それに私の気持ちはどうなるのよ! 私の気持ちは……。」
 その場にシニアは泣き崩れてしまった。
 なんかどうしたらいいのか分からなくてオロオロするしかできなかった。
 そこにシニアを慰めるのはこの人しかいないだろう。
「シニア…そんなに深く考えるな。…俺がついてる。」
 そういってギアはシニアを抱きしめた。
「俺だけじゃない。ここにいるみんながついてるんだ。俺たちを頼っていいんだからな。」
「そうよ、シニア。わたしたちも協力するわ、なんでも。」
 マリーナがガッツポーズをして見せた。
「…ありがとう、みんな。そうね…こんな弱い私、私じゃないものね。いつもの私に戻らなく
 ちゃ。」
 泣いたあとの彼女の笑顔は、とてもはかなく見えた。

(38)
 夜もふけて、わたしたちは各自の部屋へと帰っていった。
「ひゃぁ〜 気持ちいい!!」
 ゆったりとした大きなお風呂に足を伸ばしてくつろぐ。
 あー なんか疲れがとれていく感じがする。
 今日だけでいろんなことがあったもんなぁ。
 クイズとかパーティーとか。
 普段わたしたちとは無縁なことが多すぎて、頭の中がパンクしそう。
 でも、こんなことが明日からは続くんだよね…大丈夫かなぁ。

 お風呂からあがると、ルーミィとシロちゃんは仲良くベットに寝ている。
 起こさないように静かに外を見ると、庭のほうに誰かがいるみたい。
 こっちからじゃよく見えないなぁ。
 よーし、行ってみよ!

 おそるおそる行ってみる。
 気づかれたらしく後ろを振り向かれた。
「…なんだ、あなただったのですか。どうしたのです、眠れないのですか?」
 やさしく気遣ってくれたのは王子だった。
 白くて薄いパジャマを着ていて、男でも色気があるような気が‥。
 おっと、いけない。そんなこと考えちゃ。
「なんとなく外に出たくなったので…気持ちいいですね、風が吹いてて。」
「そうだね。そうだ、僕に礼儀正しい言葉とかは使わなくていいよ。名前もアロウでいいし。
 僕もパステルって呼ぶから。いいかな?」
 なんて顔を近づけてくるもんだから戸惑ってしまう。
「…あ えーと そ それでいいです。」
 吹いてくる風の音が続く。
 わたしは何を話したらいいのか分からなくて黙ったまま。
 王子は髪をかき上げながらわたしの方を見た。
「パステル。君に聞きたいことがあるんだ。」

 その夜は、1人の少年の心を知ることとなった。 

(39)
 王子がわたしに聞きたい事?
 いったい何なんだろう。
「えぇ、わたしでよければ何でも聞いてください。」
 すると、ためらうように聞いてきた。
「…実は‥その、 女性の人って、男から告白されてどう思うものなのかなって。」
「えぇ!? 告白ですか? いや〜 そうですねぇ…。」
 どう答えたらいいんだろう。
 そりゃ 分からないわけではないけど…。
 わたしがギアから告白されたとき…うれしかったし、でもどうしたらいいのかすっごく
 迷ってて、まだ答えていない。
 今のわたしでは答えられないかも。
「…告白されて『いやだ!』 って思う人いないと思いますよ。」
 王子がうずくまって小声で言った。
「なら なぜ 彼女は走り去ってしまったのだろう。」
「…王子…いえ、アロウ。誰かに告白したの?」
 アロウは顔を真っ赤にして照れながら
「…はい。好きな女性に告白したのですが…残念ながらふられてしまいました。」
「なんて言われたの?」
「…僕が告白したら、彼女は涙を流して走り去ってしまったのです。」
 涙を流してたのかぁ。
 それってうれしかったからじゃないのかなぁ。
 でも、それだと走り去っていかないはずだし。
 うーん、難しいなぁ。
「彼女とはどうなったの?」
「前と変わらない態度でいます。でも、あまり話すことはなくなりましたが。」
 身近にいる人なのかな。
 なんかかわいそうになってきたなぁ。
「‥もう、ほら元気だして! 明日からあなたの花嫁を決めることになるのよ。」
 少しでも元気になってもらおうと勇気ずけると、アロウは優しい声で答えた。
「…ありがとう、パステル。やっぱり君は思った通りの人だ。素直に話せる。」
 そのあと2人して、キラキラと輝く星を眺めていた。

(40)
 夜ってこんなに長いものだったっけ?
 そう思うくらいわたしはアロウと話していた。

「そう、まだあの頃の僕はモンスターから逃げてばかりで、すっかりシニアに迷惑をかけて
 たよ。最初はまだシニアがいとこだってことを知らなかったから本性がばれて戸惑ったけ
 ど、後でそのことを知ってからは素直になることができたよ。今ではすっかりお姉さんみ
 たいになってるけど。」
 わたしはアロウが冒険者時代の話しを聞いていた。
 話しているときのアロウは子供みたいでとても楽しそう。
 今までこんなことを話せる人がいなかったんだって。

「でも、そのシニアが花嫁候補に出て良かったの?」
「…実は父上がシニアを知ってからずっと僕の嫁にならないかって言ってるんだ。もちろん
 シニアは断ってるけど、なかなか父上は諦めないから。今回のことで諦めてもらおうと
 思って来たらしいよ。」
「ふ〜ん。じゃぁ シニアのことは好きにならなかったんだ。わたしが男だったら好きになる
 かもしれないのに。」
「いや、別にそんな訳じゃないんだ。たしかにシニアを見たとき驚いたよ。とても綺麗だった
 からね。でも、一緒に冒険しているときのおかげで仲間みたいな感じがぬけなくて、その
 間に好きな人ができたから。…今でも好きだよ、シニアは。ただ今では家族愛になって
 るけど。」
「…私もそうなるのかなぁ。」
「そうとは限らないよ。いつの間にか好きになっているかもしれない。その時、正直に
 言わないとそのままになってしまうけど。…パステルなら大丈夫だよ、きっと言える。」
「…なんか、それってパーティーのなかの誰かと くっつくみたいだよ。」
「あぁ ごめん。そういう意味じゃないんだ。」
「わたしだって分からないわよ! もしかしたら花嫁候補の中で優勝するかもしれないん
 だから!!」
 わたしがそう言うとアロウは驚いた顔をした。
「えぇ!?」
 そして真剣な顔になって、わたしの手の甲に軽くキスをした。
「‥楽しみにしてますよ。パステル。」

 アロウが去っていった後も、わたしは顔を冷やすためにまだ夜風に吹かれていた。


 1998年6月25日(木)18時19分01秒〜7月11日(土)16時09分49秒投稿となっている、31〜40話です。コメントは、なしでいいですね。

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