〜永遠の闇の中で〜 光の去った暗闇の中に３つのため息が漏れる。 「行っちまった・・・・・な。」 「行ってしまいましたね。」 「・・・・・うん・・・・・・・・・。」 しばらく３人の間に無言の時が流れる。 最初にそれを破ったのはセイム。 「・・・ねぇ、シルエット、シングス。」 「何だ？」「何ですか？」 同時に返事をした仲間ににっこりと笑って言う。 「今まで・・・・こんな楽しい時間なかったよね！！」 「・・・・ん、そーだな。」 「えぇ。」 「何かミモザ姫ってほっとけないんだもん・・・こっちも楽しんじゃったし。」 「俺はハラハラしたぞ。」 ３人はお互いの顔を見ながらくすくすと笑い合う。 笑顔のまま続けてシルエットが口を開く。 「・・・・・何か今までのお客様とは違ったんですよね。」 「うん、そう。」 「そうだな、何か大切なことを教えられたって気がするぜ。」 「僕も！」 「私もです。」 お互いがお互いの意見に同意しあう３人。 セイムが何もない頭上の闇を楽しそうに見ながらこう言う。 「今までミモザ姫のように親しく感じた人もいなかったし、 僕たちもこんなに気をつかって、それでお互いがお互いを思って・・・・ ってことがなかった気がする。」 「客のために・・・とか言いながら心からそうじゃなかったんだよな。」 同じようにシングスも遠くを見つめてそう言った。 そんな２人をおもしろそうに見ながらいつもの調子でシルエットが話す。 「・・・・彼女のおかげで知ることができたんです。 今までのお客様にしてきたことは最高のものではなかったかもしれませんが、 これでまた私達の仕事がよいものに近づきますよ。」 視線をシルエットに移し、クスッと笑うセイム。 「・・・それでもまだ最善じゃないんだね？」 「そりゃそーだろ。上はいつでも見てるもんだぜ！」 その言葉に対して肩をすくめて右手の人差し指で上を指して言った。 “・・・・・・・” 突然、音の無い光の波紋が闇の中に広がった。 ３人は同じように周りを見て、お互いの顔を見た。 「・・・・・誰かいらっしゃったようですね。」 「ま、この仕事に終わりはないんだ。」 「お客様に良き未来を歩いていただくために。」 「うん！」 そして笑顔で笑い合う。 「行こっ！！！」 「ああ。」 「えぇ。」 元気よく闇の中を光に向かって走って行くセイムの後を シングスとシルエットはゆっくりと歩いて行った・・・・。 ＥＮＤ
1999年8月06日(金)22時56分30秒投稿の、リューラ・Ｆ・カートンさんの小説「先への扉」外伝その１です。