「青き戦士の神話・至宝の寵児たち」(3)

天使の到来? その一

「んー、なんかこんなクエストひさしぶり!!」
「そうだよな、なんか最近は人間以上のレベルのばっかしだったもんな」
「誰かさんのせいでな」
「トラップ!!」
私たちはこんなおしゃべりをしながら、ズールの森を歩いていた。

例の騒動からだいぶ月日がたった。
みんなあの時のダメージから回復して、もう思い出になりかけたある日、久しぶりにクエストをやろうってクレイが言い出して、それでこうして森に来ていた。
あ、ギアは今回は一緒にいない。
なんでも昔の知り合いから助けてほしいって連絡が来て、そっちに行ってしまった。
・・・でも、運命の神様ってのは相当意地悪らしく、私たちはまたとんでもない事件に巻き込まれてしまうのだった・・・。

「おーい、薪はこんなもんでいいかぁ?」
「うん、十分十分」
・・・日も沈みかけてきたんで、私たちはキャンプをすることにした。
・・・ほんと何もかもが久しぶりでうれしくなる。
と思ったとたん、笑いがこみあげてきた。
やっぱり、人間なんだな、って
「・・・珍らしいですね、虹ですよ」
キットンの言葉に誘われるように空を見ると夕焼けに照らされるように七色の虹がアーチを描いていた。
「珍しいな、夕方に虹なんて」
わずかに微笑みながらクレイがつぶやいた・・・
その時。

”ヒューーーーーーーーン”
”ドカバキッ!!”
「わっ!!!」
・・・何かが落下する音とクレイの悲鳴が重なった。
「クレイ!?」
「いたた・・・」
そこにはクレイを下敷きにして身体のあちこちをさすっている少女がいた・・・・
「えっと・・・ここは・・・」
さっきの虹と同じ瞳をあちこちにさまよわせ彼女はうめいた。
(うわ・・・)
彼女の背中には白い翼があった・・・って彼女天使!?
呆然とする私たちに彼女は叫んだ。
「あ、あなた達”青の至宝の化身”って方ご存じない?
私あの方をさがしてるの!!」
せっぱ詰まった物言いに私たちは顔を見合わせ・・・
「お嬢ちゃん、その青の至宝の化身ならあんたの真下のいるぜ」
トラップの言葉に全員の視線が彼女に下になっているクレイに向いた。
「た・・たのむ、はやくどいてくれ・・・」
「ご、ごめんなさい!!」
彼女はふわりと宙に浮いて身体をどけた。
そして思いがけない言葉を口にした。
「おねがいします!!私たちを助けてください!!
青の至宝様!!」
・・・・それが再び私たちを神話の世界へいざなう始まりの言葉だった。


天使の到来? その二

天使族―神々の血をもっとも色濃く受け継ぐ種族で時に神の従者として天へあがることもある。
彼らは平和主義であるが、受けた攻撃に対して魔法で対抗する。
そして・・・伝説の至宝の神官でもある。

「・・・至宝の化身様がこんなに素敵な方だったなんてー!!」
天使の少女、リリスはクレイの腕にしっかりしがみつきながらそう言った。
さっきからその状態で話が全然進まない・・・
クレイはクレイで困った顔をしてるし、みんなどことなくいらいらしてる・・・ってもう日もとっぷり暮れちゃったじゃない!!
しかもまだご飯食べてないんだから!!
そのうえ、彼女ったら時々私を見ては勝ち誇ったように笑ってるし・・・もう早くしてよ!!
「・・・で、あんた一体何しにきたんだ?」
・・・爆発5秒前。
そんな感じでトラップが文句をつける。
彼女ははっとした顔でまわりをみて・・ようやく日が暮れたことに気付いたらしい。
せっぱ詰まった顔でクレイに懇願した。
「青の至宝様!!貴方の神官である私たちの
一族が赤の神官の一族に滅ぼされそうなんです!!」
「神官?オレの?」
クレイの言葉にリリスさんはこっくりうなずくと、冒頭でした天使族の説明と・・そのいきさつを話し出した。

・・・ことの発端はクレイがジュディさんと戦ったときと同時期のことらしい。
突然天使族の里に赤の至宝の神官である堕天使族が侵略してきたらしい。
堕天使は天使族の中でも、闇の中にいきる種族らしく攻撃力は天使族を遙かに上回る。
天使族は防戦を強いられ、・・・そんなある日長が神託をうけたらしい。
『青き至宝とその守護石の力を借りよ』って。
で、次期長の候補である彼女が至宝を探しにはるばるやってきた・・・
「ちょっと待て!!じゃあクレイに至宝の力を使えっていうのか!?」
「そうです!!そうでなきゃ私たち・・・」
泣きそうになった彼女にキットンはきわめて冷徹に私たちの意見をいってのけた。
「リリスさん大変申し訳ないんですが、クレイは至宝ではなく一人の人間として生きたがってます。
そして私たち彼の守護石もまた、人として生きることを望み、彼の意志を尊重しているのです。
なのに、貴女は彼に至宝として生きろというのですか!?」
彼女は唇をかんだまま、何も言わなかった・・・


天使の到来? その三

「・・・・でも、私たちの一族が生きるか死ぬかの瀬戸際なんです」
リリスさんは手を握りしめたままそう言った。
「確かに至宝様の力を借りるなんて、虫がいいことかもしれない。
でも・・・そうしなきゃ生きられないって神託があるし・・・・」
彼女はそれだけいってクレイを仰ぎ見た。
「至宝様!!貴方はどうお考えなのですか!?」
クレイは彼女を見て、私たちを見て、ゆっくり言葉を紡いだ。
「おれは・・・人として生きたい。
でもオレの力が必要とされてるのなら・・・助けに行くべきだと思う・・・
それは至宝うんぬんじゃなくって、人間として・・・冒険者として当然のことだから・・」
「当然のことをして代わりにてめぇを失ってどうすんだ!!」
クレイの胸ぐらをつかんで、トラップは怒鳴った。
その目には仲間を失いたくない、としっかり映っていた。
「トラップ・・・」
「冷静になってみろ!!そんな戦いで人間でいられるわけがねぇ!!至宝になってオレ達と二度と会えなくなるんだぞ!!
それでいいっていうのかよ!!」
・・トラップの言うことは正しいよ。
でもクレイの言うことも正しい。
だけど・・・・私は・・・・・
「クレイ・・・行かない方がいいわ」
私はそう彼に言っていた。
「パステル・・・?」
「冒険者として求められれば助ける。それは当然よ。
でも彼女は冒険者じゃない至宝としてのクレイの助けを求めてる・・・・
クレイは人として生きる。
・・・だから行かないで」
「そんな・・・!!」
リリスさんは激しい目で私をにらんだ。
「貴女、守護石のくせにそんなこというの!?」
「守護石だからじゃない、彼の仲間として言ったのよ!!」
「じゃあ、私たちが滅んでも構わないっていうの!?」
「そうじゃない!!だけど、人間に至宝の生き方を強いる権利は神官と言ってもないんだから!!」
「それはあの方の考えることでしょ?!あなた達に言われることでもないわよ!!」
「やめろ!!二人とも!!」
いつの間にか言い争っていた私たちをクレイが止めた。
「・・・ともかく、みんな明日の朝シルバーリーブに戻って、これからどうするか考えよう。
リリスさん、それでいいね」
「・・・・はい」
クレイの言葉に全員がうなずくしかなかった。

・・・でも、この時クレイは決めていたのかも知れない。


別離 〜クレイ

・・・満月が部屋中を照らしている。
オレはリリスさんからもらった魔晶石をマントの留め具にした。
・・・彼女と会ってから次の日、オレ達はシルバーリーブに戻った。
パステル達はオレを行かせるのに反対していたが、・・・・もう決めたんだ。
オレは天使族を助けに行く。
ただし至宝としてじゃなく、一冒険者として。
みんな怒ることだろう。
こんなスタンドプレーしたんだから。
でも、・・・・オレは信じたい。
自分自身を、・・・・みんなを。
至宝の力に負けないこと、そしてみんなが待っていてくれること。
「パステル・・・」
気がつくとオレはパステルが眠る部屋にいた。
いとおしい、オレの女神。
彼女も守護石だから行くと言い出しかねない。
でも・・・彼女はもとよりトラップもキットンもノルもルーミィも、そしてここにはいないギアも守護石の力に目覚めていない。
シロは多分力を自覚してるだろうけど、彼にはみんなを守ってもらわなきゃならない。
そしてこの戦いは力なしに生きられない。
そんな戦いでみんなを傷つけたくない。
だからおいていく、大切な物全てを。
至宝とならずにオレが帰ってこれる場所はここだから。
「パステル・・・愛してる」
そっと彼女の額に唇を押しつけた。
精一杯の想いをこめて。

魔晶石に願い、力を解放した。
いつか見た青い翼が生えてくる。
「よろしいのですか・・・?」
リリスさんが複雑そうな顔でたずねる。
オレは大きくうなずき翼を広げた。
・・・・オレは必ず帰る。
人として、みんなのところへ。


そばにいたい 〜パステル

「クレイのばかやろーーーーーー!!」
トラップはそう叫ぶと、持っていた手紙をテーブルにたたきつけた。
・・・そう、クレイは行ってしまった。
たった一通の手紙をのこして。

”パステル、トラップ、キットン、ノル、ルーミィそしてシロ
みんな、すまない
オレは一人で天使族を助けに行く
・・本当はみんなと行きたかったけど
力に目覚めていないみんなを連れていけない
・・・みんなが大切だからオレは一人で行く
必ず戻るから、シルバーリーブで待っててくれ
                クレイ”

「てめえにこんな気遣いされても嬉しくないぞ!!
そんなに心配なら一緒に連れてけ!!!」
トラップはずっとこの調子だ。
ルーミィは泣き続けてるし、ノルやキットンも怒りをはっきりと顔に出していた。
そして私は・・・・クレイを失った喪失感にさいなまれていた。
クレイがいない、
それだけでいきる力がなくなっていきそう・・・・
彼がこんなに大切だったなんて・・・・
(・・・このままクレイを失うの?)
黒い不安が心を脅かす。
そんなのいや!!
みんなと一緒で・・いたいの、クレイと一緒に!!
「みんな!!追いかけよう!!」
私はそう叫んでいた。
みんなびっくりしたような目で私を見る。
「パステル・・・」
「私、クレイのそばにいてあげたい。
大体待つのなんて私たちらしくないわ!!
追いかけましょう!!追いかけて怒ってやろうよ!!
『そんなに私たちが信じられないのか!!』って!!」
「くりぇい、追いかけるんかぁ?ルーミィ行くおう!!」
私の言葉にみんな、にやりと笑う。
「・・・そうですね、クレイを追いかけましょう。
私たちがおとなしくしてると思ったら、大間違いです!!」
「おう!!クレイの奴、一発なぐんないと気が済まないぜ!!
よっくも置いてけぼりにしてくれたな!!ってな!!」
「みんな一緒、クレイ忘れないようにいう」
「行くデシ!!」

かくして、私たちはクレイを追いかける準備をして旅だった。
え?どうやって追いかけるのかって?
答えはキットンのモンスターポケットミニ図鑑にあった
『天使族は同族と竜の翼でしか行けないかくれ里に住んでいる』
・・・正直、シロちゃんに飛んでいくのは怖かったけど、みんなすっかり興奮して、誰一人としてためらいはなかった。
クレイ、覚悟してなさいよ!!
みんなで追いかけてやるんだから!!


絆はまだ・・・ 〜クレイ

・・・もう、シルバーリーブは見えない。
オレは改めてみんなとの距離を感じていた。
「・・・クレイ様・・・?」
リリスさんがいぶかしげにこちらを見る。
彼女にはクレイって呼ぶように言ったんだけど・・・
いまだ敬称つき・・・・たのむからやめてほしい・・・
オレは苦笑いしながら、彼女に確認をとった。
「なあ、天使族の里って常人じゃ来られないよな?」
でなきゃ置いていこうなんて考えない。
追いかけられるところなら絶対追いかけてくる、そういう連中だからなぁ・・・
これで来られる場所ならオレ、笑うぞ。
せっかくオレがガラにもなく慎重に事を運んだってのに・・
そんなオレにリリスさんはにっこり笑った。
「ご心配いりませんわ
天使族の里は同族かさもなければドラゴン族の羽ばたきでしか来られないところにありますから」
「ドラゴンの・・・・羽ばたき?」
・・・・・
・・・・・一気に力が抜けていく。
「クレイ様!!」
リリスさんの声で翼が消えかかってることに気づき、あわてて力を集中する。
「どうなさったんです?」
「・・・・あるんだよ」
「え?」
虹色の瞳にいぶかしげな光が浮かぶ。
オレはもう笑うしかなかった。
「・・・あるんだよ!!ドラゴンの羽ばたきが!!」
「え・・・?」
・・・その様子からしてシロの存在に気づいてなかったようだな。
「・・・気づかなかった?オレ達のパーティにホワイトドラゴンがいたことに」
「まさか・・・あの子犬?」
「その通り、これであいつらが追いかけてくるための手段が見つかったわけだ」
そしてきっと追いかけてくる。
もうここまでくるとお笑いもいいとこだ。
これじゃあ何のために策を弄したんだか・・・!!
「これじゃあ、怒られるために出てきたようなもんだぜ・・・」
そう言いながらオレはこみ上げてくる笑いとあったかい気持ちを抑えることができなかった。
(まだみんなとのつながりは切れてない)
そんなうれしさがオレの冷え切っていた心を暖めていた。


嫉妬 〜リリス

・・・どうして?
どうしてそんな顔できるの?
私はこんなクレイ様初めてみる・・・
いくらドラゴンの羽ばたきがあったって隠れ里の場所までわかりっこないのに・・・
なのにクレイ様は追いかけてくるって言い切っている。
しかもすっごく優しそうに笑って・・・
そもそも、「傷つけたくない」って言って、連中を置いてきたのはクレイ様本人よ。
その時だけでも嫉妬しそうになったのに、まるで追いかけてくるのが嬉しいみたいで・・・
私は全身が熱くなるのがわかった。
・・・・・この気持ちは嫉妬。
私は嫉妬している!!
この方の仲間に!!あの女に!!
守護石としての力にすら目覚めていないってのに、そばにいるのが当たり前って顔でいるあいつら!!
この方に想われてるってのにはっきりしきらないあの女!!
(・・・・この方は私・・・私たちのものよ!!)
そう、私は小さい頃から「至宝の花嫁」、そう言われて育ったんだから!!
この気持ちは誰にも負けない!!
一族の存亡にかけて、青の至宝様を私の物にしてみせる!!
そうすれば天使族は滅びることなく、永遠に神のおそばにいられるんだから!!
決意を胸に私はクレイ様の後を追った。


思いがけない手がかり

さあ、クレイを追いかけるぞ!!・・・・と意気込んだはいいんだけど・・・・・私たちは肝心なことを忘れていた。
それは・・・・
「天使族の里ってどこにあるの?」
・・・・すっかり忘れていたもんね・・聞くの。
でも、あのリリスって子の態度じゃ教えてくれるわけないけどさ・・・聞くだけでもきいとけばよかった・・・
しょんぼりしてしまった私たちに、シロちゃんがある提案をした。
「JBのおじしゃんに聞いてみるデシか?」
・・・確かに。
天使族の里へはドラゴンの羽ばたきで行けるんだからJBなら行ったことあるかも!!
私たちはホーキンス山へ向かうことにした。

「天使族の里だと!?」
私たちが理由を話すなり、JBは大声を上げた。
ちなみに彼は人間の姿をしている。
で、さっきまでコボルト相手にRPGをしていたんだって。
・・・あいかわらずよね、彼。
JBは渋面を浮かべながら、私たちに言った。
「・・・天使族の里は遥か北の彼方、ベヒモスすら住まない山に囲まれたところにあると聞く。
わしだって行った事がないところへ行くなどとは・・・
いくらクレイのためだからって無謀すぎるぞ」
「わかってるって!!」
トラップはいらだたしげに言葉を返した。
「んなややこしいところにクレイが行くから
こんなことになったんだ。文句はクレイに言ってくれよな」
「う・・・うむ・・」
トラップのあまりの剣呑さにさすがのJBもたじろいでいる。
「だが、わしも正確な位置がわからんのだ。
こればっかりはドラゴンといえどもな・・・」
えーーーーーー!!
じゃあ、このまんまクレイと一生あえないの!?
そんなの・・そんなのいや!!
みんなも同じ気持ちだったんだろう。
一斉にJBにつめよる。
「お・・おい!!せっかく期待してきたのになにも手がかりなしかよ!!」
「お願いです!!些細なことでもいいですから教えてください!!」
「やー!!ルーミィ、くりぇいのとこ行くんだおう!!」
「わ・・・わかったから、そんな目でわしを見るなーーー!!」
みんなを押しとどめて、襟元を正しながら、思いがけないことを言った。
「ここから北のキスキン国の王家の塔がある。
そこの神官が天使族の血を引いてるとか引いていないとか・・・
手がかりと言ってもそれしかないぞ?」
「・・・キスキン国?」
思いがけない言葉に私たちは顔を見合わせた。
あの、ミモザ王女・・・いや、今は女王か彼女の国、キスキン国。
そこの王家の塔の神官って・・リリアさん・・・よね?
クレイを助けてくれた、そして初めて「青の宝玉」って彼を呼んだ女性・・・
「そういえば、名前が似てますねぇ」
そうよ、リリスとリリア、単なる偶然にしちゃあよく似ている名前よ!!
「よっし!!そうと決まりゃあ、行くか!!
キスキン国へ!!」
『おー!!』
みんなの声がきれいにハモった。
「・・・・帰ってきたら顛末を聞かせてくれ。
シナリオのネタにしたいからな」
冗談めかしたJBの言葉に笑いながら私たちはうなずいた。

・・・ようやく、クレイを追っていける!!
喜びに満ちた私の横で、トラップがなんだか寂しげな顔をしていたことに、私は気づいていなかった・・


揺れる絆 〜トラップ

(パステル、お前、クレイが好きなのか?)
そう聞きそうになるのをオレは必死の思いでこらえた。
・・・あの、ようやくクレイを追っていけるって嬉しそうに笑った顔がオレを打ちのめした。
・・・・・ああ、薄々そんな感じはしていたさ。
クレイの奴が至宝だって知ったときからな。
でもオレにも望みがある、そう思っていたのに・・・
(パステルを渡したくない)
そんな想いがおれを支配しそうになっていた。
・・クレイ、お前にはかなわないのか・・?
オレはお前に勝てないのか?
・・・・皮肉なもんだ。
好きな女を争ってるの当の相手が生まれたときからの親友、なんてな。
オレはふっと笑った。
でも今はオレの方が彼女のそばにいる。
これ以上負けられるか!!
オレはオレのやり方でパステルを勝ち取ってやる!!


炎と水の天使 〜クレイ

「キスキン国を抜ければあと2・3日で里へにつきますわ」
幾分疲労を顔ににじませながら、リリスさんはいった。
―そう、オレ達はキスキン国を今まさに抜けようとしていた。
最初、ゆっくり様子を見ながら行こうと言っていたのに、突然、休みなしのぶっとおしで飛ぶハメになってしまった。
(・・・さすがに疲れたな)
何せ、自力で空を飛ぶなんて初めてのことだし飛ぶための翼だって精神力で作ってるようなもんだしな・・
疲れない方がおかしいか。
まあ、オレのことはともかく、リリスさんは辛そうだ。
何度か墜落しそうになってるし。
「・・・リリスさん、休もう。
君だってもうフラフラじゃないか」
オレがそう言うと、彼女は半泣き状態になった。
「いいえ!!休んでる間に里にもしものことがあったら・・・!!」
「そうは言っても体力がなくなるまで飛んで、いざってときにHP1じゃ何もできないだろ?
そうしないためにも少し休んだ方がいい」
「でも・・・!!」
・・言ってることはいかにも里を気にしているって感じだけど、・・オレの気のせいかな?
何か隠しているような顔をしている。
・・・もっとも、彼女だって話したくない事情だってあるだろうしな。
リリスさんはしばらくオレの顔を泣きそうな目で見つめていたけど、すぐあきらめたように下へ降りてった・・・って言うよりあれ、落ちてるぞ!!
オレはあわてて彼女を抱えると、静かに地面に降りた。

大地の感触が心地いい。
(人ってやっぱり大地に生きる種族なんだな)
しみじみそんなことを思っていると
  ”ヒュッ!!”
矢の形をした炎がオレめがけて飛んできた。
あわてて炎をうち払う。
「・・・堕天使族!!」
忌々しげに呟くリリアさんの声を背に、オレは翼を実体化させ、飛んだ。
「クレイ様!!あいつらは炎と水の精霊を使います!!
気をつけて!!」
「炎と水!?」
人の生活に必要な精霊を操るのが堕天使だって!?
・・・・混乱する頭を抱えながら、オレは初めて堕天使族と相対した。


 1998年7月09日(木)20時56分59秒〜7月27日(月)03時31分48秒投稿の、冬木来奈さんの小説です。

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